MS70は理論的には存在できないコインです。グレーディングの哲学、大正期金貨の価格形成、そして証言の場としてのオークションを問う春号。
数字は入口であり、解釈が本体です。 キュレーターノートはその解釈を、読み手と一緒に作る行為です。
MS70は、理論的には存在できないコインです。鋳造後、コインは必ず何かに触れます。だからNGCやPCGSが「70」のスラブを付けるとき、それは「完璧」を意味しません。
「コインを見るな。コインに聞け。」大学院の古銭学ゼミで言われた一言が、今も鑑定の指針になっています。
インテリアデザイナーの菅原由美子さんはコインを「手のひらに収まる彫刻」として集めてきた。美術品の視点で選ばれたコインが、貨幣史の観点からも高い評価を受けるという発見。
明治から昭和初期まで、日本の貨幣史は世界との対話の歴史でした。金本位制参加、第一次大戦後の金解禁・再禁止、昭和恐慌——国際経済の荒波の中で、日本の貨幣は何度も生まれ変わりました。
オークションは、市場の声が聞こえる場所です。入札者が示す金額は、そのコインへの評価の表明であり、同時に市場全体への問いかけです。